2021年を締めくくる冬はありふれた気温と雨量で過ぎ、春先は比較的冷涼さを保ったまま、ブドウ樹はゆっくりと芽吹き始め、4月初旬に下りた霜もブドウ樹への害には繋がりませんでした。同月中旬から急に温度が上がり始め、ブドウ樹は一斉に伸びていきました。残りの春は暑い気温と強い日射でダイナミックなリズムで栽培が進んでいきました。5月末、ブドウ樹が花を咲かせ始め、とても良い気候条件のもと、開花は素早く進んでいきました。2020年の軌跡を思わせるかのように、2022年はとても早熟である事が明らかでした。4~5月に雨が殆ど降らなかったため畑の水分は不足気味でしたが、度重なった6月の雨と、特に6月21日にジュヴレ・シャンベルタンを中心に降った雷雨が状況を救ってくれました。夏の間もとても暑く、乾燥して日射が強かったのですが、6月に土壌に蓄えられた水分によって収穫までブドウはストレスを見せることなく育っていきました。乾燥した暑さのもとではベト病やボトリティスが発生する事も殆どなく、ウドンコ病だけは警戒する必要がありましたが、収穫までブドウ樹は健全な状態に保たれました。
私たちのドメーヌでは9月3日にコートでブドウを摘み始め、9月17日にオート・コートで終了しました。春先に芽吹いた沢山のブドウが、自然災害に遭うことなくシーズンを全うできたため、品質・量ともに素晴らしい収穫物が得られました。改めて見てもブドウの健全さはこの上なく、選果で除けたのは熟しきっていない房だけでした。
2022年のヴィンテージはタイプ的に2019年に比肩する熟度の高いアロマを持ち、果実の存在感は2019年のそれを上回っています。味わいには豊満な芳醇さがあり、酸味と絹の触感のようなきめ細かいタンニン、弾けるフルーツが美しいハーモニーを奏でています。どのワインをテイスティングしてみても既に楽しめる近づきやすさがあり、偉大なアペラシオンにおいてはセラーで何年か寝かせれば更に価値を増していくポテンシャルがあります。